とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
誰かに話したかったが、まだそれには早い時期だった。
それに“人員不足”と言われただけで、“採用”とは言われてないのだ。
気持ちを落ち着かせようと深呼吸していると、携帯が鳴って飛び上がった。
「…なんだメールか…」
勝手に出版社からかと勘違いして恥ずかしくなった。
メールは右京からで、忙しくてSkypeの時間が取れないと書いてあった。
「そっか…もうすぐ3年に上がる時期だから、試験なのかな…」
国内の大学と違って海外の大学は入ってからが大変だと聞いた事がある。
右京を見ているとそんな素振りを見せないからすっかり忘れていた。
メールの最後に“声を聞けなくて寂しい”と書いてあり、ちょっと思わずにやけた。
忍はロザリオを触りながら「私も寂しい…」と呟いた。
忍は“私も就職活動が忙しい”とメールを打ちながら、あまり可愛くない内容だなと思った。
「…たまに可愛く…」
そう思って、“私も寂しい…会いたいよ”と付け加えた。
するとすぐ着信があって思わず携帯を落としそうになった。
『忍が寂しいって言うから電話しちゃった。』
開口一番、そんな事を言う右京に忍はクスクス笑った。