とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
寮の部屋に戻るとPCに向かうアランが振り返った。
『レポート進んだかい?』
『資料を見ながらうたた寝してたよ…』
『連日徹夜だからね…
今日はとりあえず会議だけの予定だから、早く帰れるよ。
特攻がいざって時に動けないと困るからね。』
アランはそう言って眼鏡の奥の瞳を細めた。
…この笑顔に騙されたんだ…もう引っかからないぞ!
そもそも何故こんなに寝不足になったかと言うのが問題だ。
それは右京が日本から戻ってから約1ヶ月後…つまり5ヶ月程前の事だ。
久しぶりにP2の召集があり、全員が顔を揃えた夜にリーダーのアランはとある新異教主義の宗教について話し出した。
それは“魔女宗”と呼ばれ、神を崇めるキリスト教やイスラム教ではなく、女神を主神として崇拝している宗教の話だった。
『“ウイッカ”または“ウイッカクラフト”と言う宗教を知っているかい?』
『女神を崇拝している宗教だろ?
かなり異端だって聞いた事がある。』
そう答えた虎太郎にアランは満足そうに頷いた。
『女神といえば聞こえはいいが、実際は“魔女信仰”だ。
インドの“ザック団”がいい例だ。』
『“ザック団”?』
聞いた事ないな…