とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
それは昔から宗教儀式で使われ、吐き気を伴う幻覚症状を引き起こすものだとダンは語った。
『この薬物は抗うつ剤を併用すると死に至る事があるらしい。
今回の変死体の死因がそれだと検死結果が出ていた。』
『ただのジャンキーってワケでも無さそうだな…』
“ウイッカ”という魔女宗の名が脳裏をよぎった。
その男性は何らかの儀式に参加したのか?
『ダン、そのアヤワスカの作用はどのくらい持続するんだ?』
『状況によるとは思うが、2~6時間という話だ。』
メガネを押し上げて少し何かを考える仕草をしたアランは、モニターの地図を見ながら呟いた。
『最長で6時間か…範囲を広げてみるか…』
このアランの一言で右京達は数ヶ月の間、“魔女探し”の為に睡眠時間を削る事になったのだった。
進展があったのは捜索を始めて2ヶ月近く経ってからだった。
その日、右京と虎太郎はいつもの様に森の中に入ると木の上に登った。
シンディお手製の外套のようなコートのお陰でうまく暗闇に溶け込んだ二人は、別々の場所で辺りを捜索していた。
『フクロウになった気分だ…』
インカムからそんな虎太郎のボヤく声が聞こえて右京はちょっと笑った。
『お前がフクロウなら、俺はコウモリってところか…』
時々ボソボソと会話を交わしながら、ロビン・フッドのように木の上でくつろぐ。