とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
不意に虎太郎は何かの気配を感じて身を起こした。
…この気配って…
カサカサと頭上の枝が揺れ、フワリとそれは虎太郎の隣に腰を下ろした。
虎太郎はインカムを一旦外して溜め息をついた。
『リサ…何しに来た…』
『最近全然相手にしてくれないから浮気調査よ。』
『そうかい…浮気相手ならまだ現れていないよ。』
『それは喜ぶべき?』
『どーだろ…』
可愛く笑うリサにつられて虎太郎も笑った。
『どーせ暇でしょ?寂しそうだから一緒に居てあげるわ。』
『…誰が寂しいって?』
片眉を上げる虎太郎にリサはクスッと笑うと顔をそっと近付けた。
『あなたよ。』
『そうなのか…自分でも気付かなかったよ。』
リサが触れるほど至近距離で虎太郎を誘うが、いつものシレッとした態度にリサが先に痺れを切らした。
虎太郎の唇を奪うと優しいキスが返って来てリサはホッとした。
ふいに唇を離した虎太郎はリサの唇に人差し指をあてた。
黙ってインカムを装着すると『誰かいる』と囁いた。
静かに立ち上がると暗闇を睨む瞳の色がブルーに変わった。
リサは珍しく真剣な表情の虎太郎に不覚にもドキッとした。
…ヒューガのあんな顔…初めて見た…
虎太郎は暗闇に視線を向けたままリサに“動くな”と合図した。