とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~


『11人…いや、12人だ。』

『“魔女”か?』

『わからない…接近してみる。』


虎太郎は視線をやっとリサに戻すと腰を落としてインカムを外した。


『浮気相手がお出ましだ。

行ってくるから大人しく待ってろよ。』


そう言ってリサの髪を耳にかけて微笑んだ。

リサがコクリと頷くと『イイ子だ』と囁いて軽く頬にキスを落とした。


リサはただ黙って虎太郎の後ろ姿を見送った。

やがてそれは暗闇の中に消えていく。


頬には虎太郎の残した優しい感触…


『…なによ、子供扱い?…生意気…私を置いてくなんて!』


リサは悪態をつくと木の上で膝を抱えた。
小さな体を更に小さくして…


…絶対に寂しいなんて言ってやらないんだから!


そんな事を考えながら、大人しく虎太郎の言いつけを守る。


『…ムカつく…』


自分にだけ聞こえるくらい小さな独り言は、風の音に掻き消された。






『クロウ、南西に500メールだ!』


インカムから聞こえたロイの声に“南西ってどっちだ?”とツッコミを入れたくなる。

だが、右京にとっては暗闇だろうが森の中だろうが大して問題ではなかった。


本部でロイに暗視スコープを渡されそうになったが、右京には裸眼の方何倍もよく見える。


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