とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ニックは一冊の本を手に取るとペラペラと捲りながら顎髭をさすった。
『なぁクロウ。…その“使い魔”、一掃したって言ってたよな?』
右京はボトルのキャップを締めると頷いた。
『一匹蹴り飛ばしたら、アチコチから湧いてさ。
面倒だからまとめて砂にしてやった。』
『砂か…。ちなみに、こんな感じか?』
ニックは手にしていた本を開いてテーブルに置いた。
そこには牛のような犬の絵が書かれていた。
『…似てる…だけど黒い影みたいだった。』
『コイツは“クー・シー”という精霊の番犬だ。』
『これが“クー・シー”…』
話には聞いた事があったが、実際見たのは初めてだった。
『クー・シーが居るって事は近くに精霊が潜んでるかもな。』
『ほぅ…会ってみたいな。』
『はぁ!?精霊にか!?アイツらは意外に腹黒いぞ!?』
ニックは心底嫌そうな顔で『勘弁してくれ』と言った。
何か精霊に恨みでもあるのだろうか…
『よくわかんないけど、何か分かったら教えてくれ。』
『帰るのか?』
『ああ…飲み過ぎたから帰って寝るよ。』
そう言って右京は“P2”を後にした。