とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~



本部に戻った右京達にアランはまだ硬い表情だった。


『警察が嗅ぎ付けてあの森に向かったらしい。』


そう教えてくれたのはニックだった。


その後、ウイッカが集会を開く事は無かったがシモンズが今回の“不可解な”出来事で諦めたとは思えなかった。


ダンの話だと、シモンズは後から来た警察に取り押さえられたが、分裂症と診断され罪に問われる事なく釈放されたらしい。


しかも保護観察付きで…


アランは『一層やりずらくなった』と愚痴っていたが、右京はある意味シモンズの行動も制限されるのではと少し安心していた。




が、人間とは不思議なもので、しばらく何事もないとその後も平和だと思い込む。


そんな約束された未来などどこにもないのに…


明日…いや、一分先の未来すら何が起きるかわからないのだ。



よく『神のみぞ知る』と人は言うが、そんな事もあるはずない。



神はそこまでお人好しではない。

絶対的な忠誠を誓ってはいる右京でさえ、意外と人間に無関心な神が多いと感じていた。


その分、使徒として自分たち天使が働くのだ。


…あぁ、自分は堕天使だが…


何にせよ、人間も天使も…主である神ですら大差ないのだ。


それが善か悪か、弱か強かの違いである。


右京の…否、ウリエルの主である神“ラー”は『それでいいのだ』と言った。

『善があれば悪がある。その連鎖があるから世界が成り立つのだ』


と…。






主よ…



もしその連鎖がなくなったら…



この世界はどうなるのでしょう…




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