とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~


グリーンは少し身を乗り出すようにして、ベッカーに『ドクター』と切り出した。


『俺思うんです。…聞いてくれますか?』

『ええ、もちろん。何を思うんですか?』

『空が割れて、気味の悪い蹄の音か聞こえて…

凄く怖かったんです。

イイ歳して馬鹿らしいかもしれませんが、何かに纏わりつかれた気がして…』

でも…と一呼吸置いてからグリーンは真っ直ぐベッカーに視線を向けた。


『背後にあの黒いコートの男が現れた瞬間、纏わりついていた何かが消えたんです…!

もしかしたら、あの男は使者じゃなくて救世主(メシア)かもしれないって思うんですよ…』


今度はメシアか…


だが、自分の自我を守る為に恐怖の存在を守護する存在だと置き換えて考える事は、少なからずある。


『では、その男にグリーンさんは救われたんですね。』

『はい…!俺は運が良かったんです。

…いや、儀式に利用されてる時点で運は良くないんですけどね。』


少し笑いながらグリーンはそう言った。


『俺、真っ当な生き方してなかったから、神からの試練を受けたんだと思うんです。』

『試練…ですか?』

『はい、“己の行いを悔い改めよ”ってお告げな気がして…

だから、ちゃんと教会にも通ってるんです!』


グリーンは毎週の礼拝も最近は欠かさない様になったとか…


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