とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~





グリーンが帰った後、ベッカーはカルテにペンを走らせながら唸った。


『グリーンさん、とてもいい表情をしてましたね。』


看護婦がそう声をかけてきたので『ああ、そうだね』と答えてからベッカーは考えた。


魔女宗の中で同じ“黒いコートの男”を見たと言う数人は、全員それを“悪しき存在”と言っていた。


心理学的に診れば、それが正しい。


だが、グリーンの更正した様子を見ると一概にそれが正しいと言い切れない気がした。


『…魔女宗の方達の診療はいつだったかな?』

『明日の午前中です。市内の警察なのでお間違えなく。』

『ああ、そうだったね。』


事件の加害者にあたるため彼等は警察の監視を受けていた。

…と言っても直接手を下したのは1人だけだ。


“アンナ・シモンズ”


彼女のカルテを開いて目を走らせる。


シモンズの診断結果は鑑別不能型の精神分裂症だったがどこか不自然な点も多かった。

どうも計算して分裂症を装っているようにも思えた。


感性が鋭く、頭もいい。
シモンズなら精神分裂症を装うのは容易いだろう。

ベッカーは彼女には特別注意が必要だと判断した。


もし精神分裂症じゃないとしたら、恐らくまた同じ事を繰り返すはずだ。

< 231 / 474 >

この作品をシェア

pagetop