とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~


犯罪心理学において、彼女のようなタイプは極めて危険である。

それをどこまで警察が分かってくれているかが微妙だ。


もし、諸悪の根元がこのシモンズにあるとしたら?


そんな考えがよぎりベッカーは小さく震えた。


…黒いコートの男は“メシア”かもしれない…


グリーンの先程の一言を思い出し、そうならいいなと思った。


頻発する色んな事件を目の当たりにすると、ベッカーは何も出来ない歯がゆさをいつも感じていた。


ベッカーはあくまでも科学者として人の心理を推測する事くらいしか出来ないのだ。


科学者なのに救世主なんて非科学的な存在を期待する自分に少し笑える。


こんな事を考えるなんて…
神すら大して信じていないのに…


カトリックではあったが、ここ数年はミサにすら参加していない。


週末時間が出来たら教会に行ってみよう…


そう考えながらカルテを閉じてカバンの中にしまった。




< 232 / 474 >

この作品をシェア

pagetop