とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
翌日の午前中に警察署へ向かった。
ベッカーは出迎えた担当刑事にその後の捜査について聞いてみた。
『シモンズの話は支離滅裂でね…
完全にイカレテルかと思えば、いきなり正論を並べてみたり、あの精神状態じゃ話にならないんだ…』
『…相変わらずって事ですね。』
『ああ。先生が来るのを待ってたんですよ。』
『私で役にたてるのならご協力しますよ。』
『さすが、Dr.ベッカー!頼りにしてます!』
まだあどけなさの残る若いその刑事は、白い歯を見せてにぃと笑った。
『参考程度に聞きたいんですが、ドクターは嘘を見抜けますか?』
『さぁ…見抜ける時もあれば見抜けない時もありますよ。
付き合いが長い人物であれば、君にだって嘘を見抜けるでしょう?
そんなもんです。』
『でも、ドクターはシモンズの精神状態を疑っているのでしょ?』
『…彼女は非常に頭がいい。
普通、人は嘘を付くと微かに目が泳ぐんです。
彼女はそれがない。』
『じゃあ嘘を付いてないんじゃないですか?』
『…彼女だけ見てないんですよ…ある人物を…』
そうベッカーが言うと刑事は首を傾げた。
『もしかして、例の黒い服の?』
『ええ…それが気になりまして…』
『ははは…!まさかドクターがあんな奴らの妄想を信じるなんて思いませんでしたよ!』
ゲラゲラ笑う若い刑事を横目で少し睨むと、それに気付いて『失礼』と刑事は肩をすくめた。