とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ベッカーは『気にしないで』と穏やかな口調が言うと、シモンズは表情を和らげた。
『では、今日は魔女宗について話してくれますか?』
『はい…。私達は“ウイッカ”と言う名の魔女宗で、満月の夜に集会をしていました。』
『集会ではどんな事を?』
『…儀式でシャーマンが見たビジョンをみんなに伝えるんです。』
…ビジョン…
『それはどんなビジョン?』
『…あなたに何故それを言わないといけないの?』
突然声のトーンが低くなり、シモンズは人が変わった様になった。
ベッカーは予想していたので気にせず話し続ける。
『あの日のビジョンについてはグリーンさんが話してくれました。』
『…グリーンさん?誰?』
『シモンズさんの知り合いじゃないんですか?』
『…知らない…』
『そうですか…彼は未来が見えたそうです。』
ベッカーの言葉に無反応のまま真っ直ぐ見つめてくるシモンズ…
…視線は全く泳がない。
『では、質問を変えます。
“黒い空が割れる”ビジョンは見た事ありますか?』
『…“彼”が現れる時のビジョンで…』
『“彼”?』
『“暗黒の騎士”よ』
…“騎士”…なるほど。
『ビジョンに“暗黒の騎士”が出てくるのはいつも?』
『…だからなんであなたに言わないといけないのよ!』
挑戦的な目を向けるシモンズを見てベッカーは機嫌を損ねないように質問を変えた。