とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ベッカーはカバンから鎮静剤を取り出すと、抑え付けられたシモンズの腕に針を突き立てた。
数秒で大人しくなったシモンズに一同はふぅと深く息を吐いた。
若い担当警官は気を失ったシモンズを見て舌打ちをした。
『毎度毎度手を焼かせやがって!!』
『刑事さん。彼女は嘘を付いていないかもしれない…
ただ、黒いコートの男を知っている…それは間違いないでしょう…!』
ベッカーは“殺人衝動”があるかもしれないと刑事に伝えた。
『やはり、引き続きシモンズさんには注意が必要です。』
それと今回分かった事だが、“黒いコートの男”の話になると錯乱状態になるのだ。
いや、おそらくあの錯乱は演技…
聞かれたくないのだ…“黒いコートの男”の事を…
『なんの騒ぎだ!?』
ぐったりしたシモンズを連れ出そうとしていた警官を見て、廊下に駆けつけたベテランぽい警官が声をかけた。
『大丈夫!落ち着いたので…』
『あれが…例の?』
『そーっすよ…もう勘弁して欲しい。』
そんな会話をする刑事達にベッカーは近付くと声を少し潜めた。
『刑事さん方…シモンズさんはきっとまだ何かをしようとしてます。
彼女には十分警戒をしてください。』
そう言い残し、Dr.ベッカーは部屋を出て行ったのだった。