とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
“顔のない騎士”
数ヶ月ぶりに両親に会った…。
泣いて自分の無事を喜ぶ二人を冷めた目で見る。
なんの何の感情も湧かない。
両親もそうだと思っていたから、まさか捜索願いが出されているなんて思わなかった。
別に両親に対してこれといった不満があるわけではない。
ただ…
…“ウザい”…
優等生だった兄が死んでから、その歪んだ期待が自分に向けられて正直鬱陶しかった。
『アンナ。お兄ちゃんの分まで頑張って!』
『アンナ。ちゃんと学校に行きなさい!』
『アンナ。そんなんじゃ立派な大人になれないわよ!』
アンナ、アンナ、アンナ…!!
うるさい!!黙れ!!
私はあんたらの人形じゃない!
優等生だった兄の素顔を知ってるのか!?
妹に欲情して毎晩のように犯すような男なんだぞ!?
みんな消えればいい!
消えてなくなってしまえ!
そう、最初に消えたのは兄。
…ふふふ…いい気味よ!
私を救ってくれたのは“顔のない騎士”だった。
初めて会ったのは子供の頃だった。
兄から逃げて夜中森に逃げ込んだ時、彼は闇から現れた。
真っ黒な馬に跨り、私を見下ろした。
…正確には見下ろせはしなかったんだけど…
だって彼には…
…“頭がないから”…
でも私には分かった。
とても悲しい顔をしていたのが…