とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
右京の休日はジョギングから始まる。
寮の前でストレッチをする傍らでマイクがまとわりついていて、あからさまに右京は嫌そうな顔をした。
『クロウ、悪かったって!
ちょっとやりすぎたよ~』
『…話しかけるな…』
『つれないなぁ~怒ると可愛い顔が台無しじゃないか~』
『口説くな!つか誰のせいだ!』
そう言うと右京は走り出した。
マイクも慌ててそれに付いてくると、横に並んだ。
『ところでさ、気になってんだけどさ…』
『なんだよ…』
『“シノブ”って何?』
そう聞かれて右京はピタリと止まった。
『…どこでそれを?』
『さっきクロウが寝ながら“シノブ”って言ってた。“シノブ”なに?』
右京はプイッと顔を逸らしてまた走り出した。
『え!?なに!?その反応!』
『うるせーな…彼女だよ…』
『え!?マジで?じゃあ…バイなの?』
『張り倒すぞ!』
『だってヒューガがいるじゃないか!?』
『お前こそ何言ってんだ!俺はストレートだ!!』
そう言うと右京はペースを上げてマイクを引き離すと、いつもの4キロ程のジョギングコースを走り抜けた。
こっちに来てから隣人がうるさくてすっかり運動不足となっていた。
週末は右京にとって体を充分に動かせる日で、マイケルに邪魔されなければ気持ちの良い1日のはずだった。