とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
日が暮れるのを待って右京がP2を訪れると、ロイとニックが談笑する姿が目に入った。
『早いな。まだみんな来てないぜ。』
『ちょっと気になる事があってさ…』
そう切り出すと右京は借りたい本をデスクの上に開いた。
『この本にデュラハンの記述があるだろ?…ほらここだ。』
右京が指差した一節を二人は覗き込んだ。
『ああ。…何かおかしいか?』
『片手に自分の首を持ってる。』
『デュラハンだからな。普通じゃないか?』
『じゃあなぜ人間の首を持って行く?』
『…確かに…』
少し間を開けてロイは『おいおい』と眉間にシワを寄せた。
『まさか“デュラハン”じゃないとでも言うのか!?』
『あくまでも仮定の話なんだが…』
『だって例のセイレーンが言ってたんだろ?』
『だから、それがデュラハンじゃないんじゃないか?』
右京の言葉に二人はゴクリと唾を飲んだ。
『そもそもあの満月の時、すぐに現れなかったのにも疑問が残るんだ。』
恐らく姿を現せなかったのには理由がある。
右京の話にニックは顎髭をさすりながらうーんと唸った。
『もしその仮定が正しいとすれば、黒い空から現れるのは…悪魔でもない。』
『え!?…じゃあ一体…』
首を捻るロイにニックは静かにこう言った…
『恐らく“天使”だ。』