とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
天界にて…
…ウリエルが飲み込まれた先はただひたすら闇だった。
ここは“抜け道”の入り口なのだ。
とても寂しく…
そして懐かしい…
自分の持ち場である。
突如目の前の視界がぼやけ、巨大な門が現れた。
静かにその門に近付き撫でるように触れた。
『久しいな…変わりはないか?』
──ウリエル様…お待ちしておりました。──
『天界に用があってな…
ここを開けてくれまいか?』
──御意──
声の主は少し高くよく響く声でそう答えた。
ギギギギギィィィ…
大きな軋む音を立てながら門が開いた。
その先もただひたすら闇…
ここを訪れてた者は“闇の御前”と呼ぶその部屋は謁見の間で自分の為の大袈裟な黒い大理石調の玉座を構えていた。
ウリエルはそこの傍らに立つ人物に向かって歩き出した。
ただ静かでコツコツと自分の足音だけが響いた。
ウリエルの姿を見て声の主は一瞬表情を明るくし、駆け寄って来た。
『ウリエル様!!』
胸に飛び込んで来たのは黒い翼にウリエルと同じ銀髪をした女性。
ここで彼女は自分から片時も離れず献身的に尽くす忠実なシモベ…
『バジリスク…元気そうだな。』
そう。彼女は天使でも悪魔でもない。
いわば“妖怪”の類で、昔ミカエルを騙しここに送られてきた。
憐れに感じて自分の従者として拾った名もない怪鳥“バジリスク”だった。