とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ジョギングを終えて部屋に戻ったものの、まだ煙たい室内にげんなりした。
窓を全開にはしているが、しばらくはこの煙たい匂いは取れないだろう。
大きな溜め息をついて壁に立てかけられた細長いケースから木刀を取り出そうとしたが、ふと手を止めた。
ちょっと考えてから虎太郎に電話をしながら、木刀が2本入ったケースを手に部屋を出た。
大学の敷地内のグランド脇にある芝生にケースを下ろすと、木刀を取り出した。
たまたま通りかかったジェイクが近寄って来るのが見え、『Hi』と手を上げた。
『クロウ。何してんだ?』
『稽古だよ。剣術の…』
『“ケンジュツ”?なんだそれ…』
『見てくかい?今練習相手が来る。』
『ほぉ…』
そこに虎太郎が走って来た。
『ジェイ、おはよう。』
『ヒューガじゃないか。なぁ“ケンジュツ”ってなんだ?』
それを聞いて虎太郎は「見てればわかる」と笑った。
そして右京から木刀を受け取ると腰に差して一礼した。
右京と虎太郎は構えると激しく木刀がぶつかる音が響いた。
虎太郎の攻撃を受け流しながら、隙を見て弾くと右京は斬り上げ虎太郎がよろめきながらかわした。
すかさず脚を払うと仰向けに倒れた虎太郎の腹を踏みつけて喉元に木刀を突き付けた。