とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ウリエルが突き飛ばす様にラファエルの顎から手を放すと、彼はへなへなとその場に座り込んだ。
『…邪魔したな。』
そう言い残して赤い絨毯の上を真っ白な扉に向かって歩き出した。
『ウリエル!!
本当に君はやれると思っているのか!?』
その言葉に扉の数メートル手前で歩みを止めた。
『やれると思うかじゃなく、やるんだよ。ラファエル…』
『失敗したら二度と天界には戻れなくなるのだぞ!?』
ラファエルをゆっくり振り返ると先程と別人の様に優雅に微笑んだ。
『それが俺の望みだ。
俺は…人間になりたかったんだ…』
そして扉を押し開けると外へと姿を消した。
その後ろ姿はかつての熾天使だった彼の様に美しかった。
ウリエルが謁見の間から出てくると振り返った門番は床にしゃがみ込んだラファエルを見て驚きに目を見開いた。
『ラッ…ラファエル様!?』
『安ずるな。大丈夫だ。』
穏やかにそう言うとウリエルは去って行った。
その後を追う様に一羽の大きなワシのような怪鳥が羽ばたき飛んで行くのを門番は見詰めた。
『はっ!!ラファエル様!』
思わず見とれてしまった堕天使から視線を自分の主へと戻すと、慌て謁見の間へと走って行くのだった。