とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~



──ウリエル様…大丈夫ですか?──


頭の中に直接語りかける声にウリエルは頭上を見上げた。


『ありがとう、バジリスク。大丈夫だ。』


──左様でございますか。
先程ハニエル様から伝言をお預かりしました──

『ハニエルは何と?』


──天界と人間界では時間の流れが違う事をお忘れなく…と──


『ああ、そうであったな。

サリエルの所に寄ってから戻ると伝えてくれ。
夜明け前には間に合うだろう。』


──御意──


バジリスクはそう答えると頭上を旋回して去って行った。



さて…ラファエルが腰抜けと分かった今、サリエルを説得するより道はない。


まさかラファエルが更正の余地がある人間を“処刑”しようなど、そんな愚行に及んでいたのは想定外だった。


そんな事の為に天使は人間界を監視しているのではない。


本来誤った道に進もうとする者に正しい道を教えるべきなのだ。


一瞬、怒りで“あの”姿になってしまいそうな自分がいた。


怯えたラファエルの顔がちらつく。


泉まで戻ったウリエルはその岸辺に膝をついて頭を水の中に突っ込んだ。


そしてずぶ濡れになった頭をブンブンと振った。

一緒に怒りも振り払うように…



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