とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~



少し落ち着くとサリエルの元に向かう為、漆黒の翼を羽ばたかせ高く舞い上がった。


『サリエルはエデンだろうか…』


エデンなら一度戻って黄泉の門をくぐった方が早い。


ウリエルは一気に急降下して泉に頭から飛び込んだ。



自分の玉座が見えるとフワリと舞い降りた。



それに気付いたバジリスクは乾いた布を手に駆け寄ると、甲斐甲斐しくウリエルの濡れた顔を拭った。


『いいよ。自分で出来る。

それより時間が惜しい。』

『エデンに行かれるのですね。

お早く…夜明け前に間に合わなくなります。』


余計な事を言わないバジリスクに頷くと顔を拭いた布を返して玉座の脇にある扉に向かう。


通称“黄泉の門”と呼ばれる扉を押し開けてそこへ体を滑り込ませた。


エデンへ続く一本の階段はタルタロスの真上を通過するように架かっている。


律儀に一段一段登って行く時間はない。


ウリエルは6枚の翼をはためかせ、滑るように階段すれすれの高度を飛行しながら上って行く。


やっとエデンの入り口まで辿り着くと、園への扉を開いた。


薄暗かった闇に光が漏れる。


そこは一面の花園だった。


エデンには四季がある。


天界の気候は一定で初夏のように穏やかだが、エデンはこの時期春だったらしい。


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