とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~


『私はどうするべきなのでしょう…』

『サリエル。お前は堕天を悔いているか?』

『え?…いいえ。』

『私もだよ、サリエル。

人間に荷担する事の何が悪い!』

『しかし、私が手を下さないといけない人間も居るのも事実…

ラファエル様の言う事もわかるのです。』


悲しそうにサリエルは一筋の涙を零した。


『…私とお前は似ているんだそうだ。

だが私から言わせれば、お前のような“しみったれ”と一緒にされて迷惑だ!』

『ウ…ウリエル様…!?』

口調が変わったウリエルにサリエルは呆気に取られた。


『いいか、サリエル。

泣いてもどうにもならないんだよ。

今自分に出来る事を考えろ!

誰の命でもなく、自分の正しいと思う事が出来るか出来ないかだ!!』

『私の…正しいと思う事…?』

『そうだ。

それがラファエルの命と同じ“処刑”だとしたら…

俺がお前を…狩る!!』


ウリエルの鋭い眼差しにサリエルはゴクリと息を飲んだ。


…これが…“黄泉の番人”


『何故あなたは…

何故あなたは、そこまで人間の為に己を汚す事が出来るのです!?』

『決まってんだろ!?

俺は人間が好きだからだ。

好きな者を守って何が悪い!

それが罪になると言うのなら、幾らでも罰を受けてやる!!』


大きく見開かれたサリエルの瞳から止めどなく溢れる涙…


サリエルはウリエルの強さに触れた気がした。


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