とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
まだ外は完全に日が昇る前で人気は少なく、うっすらと霧が出ていてサリエルを連れて行くには好都合だった。
右京は路地に入ると跳躍してビルの屋上に上がった。
後からサリエルも外套を翻して付いてくるのを確認すると、ビルからビルへと飛び移って移動した。
街中の公園外れにある木々の上まで来ると『潤』と呼び掛けた。フワリと姿を表した悪魔は優雅に跪いた。
『お呼びでしょうか、右京様。』
『見張りご苦労。コイツと俺も隠してくれ。』
そう言ってサリエルを振り返るとわなわなと震えて居るのが分かった。
『サリエル?』
『あ…あ…悪魔!?』
潤を見てパニックに陥ったサリエルは右手を突き出し大鎌を出現させた。
『ちょっ!?…待て!!』
『…なんですか?このへたれ堕天使は…』
サリエルを半眼で見詰め潤は右京をチラリと睨んだ。
『…サリエルだ…』
『知ってますよ。元アーク(大天使)ですよね?
一応ワタクシ、スローンズ(座天使)でしたから…
そうじゃなくて何故ここに居るかを…聞いているんですよ!!』
サリエルの大鎌をヒョイと避けながら潤は右京に悪態をついた。
ブンブンと大鎌を振るうサリエルの前に体を滑り込ませる。
身を捻って鎌の柄を掴むとサリエルの腕を蹴り上げて大鎌をもぎ取った。
『待てと言ってんだろ!』
右京は『人の話を聞け!』とサリエルの頭をバコンッ!とまた叩いた。