とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
時刻は朝7時少し前だった。
ちらほらと人影も増えて来た。
『クロウ。そっちはどうだい?』
『自宅前にセダンが一台。
恐らく警官だろう。』
『ダンが警察無線のチャンネルを探り出した。
傍受を開始している。』
『オーケー。ロイと虎太郎は?』
『もう直ぐそっちに到着する。』
その言葉通り1ブロック先に一台の電工会社のワゴン車が止まった。
『スタンバイOK』というロイの声が聞こえるとアランからのサインを待った。
『よし、みんな。ミッションスタートだ!』
『オーケー、ボス!』
そう言うとロイと虎太郎は作業服姿で車から降りた。
ボストンバックを手に虎太郎が警察車両に近付いた。
『すみません、電気工事の作業をしたいんだが、車を動かして貰えないか?』
『…他から出来ないのか?』
『ここに電線が集中してんですよ。』
虎太郎がセダンの脇にある電柱の上を指差した。
セダンの運転手が舌打ちしながら車のエンジンをかけると、虎太郎は『ありがとう』と言ってロイの作業車両に手招きをした。
セダンが止まってた位置に車両を停車させるとロイは電柱に登り始めた。
しばらくその様子を見ていたサリエルは右京に『何をしているんだ?』と聞いた。
『カメラを仕掛けるのさ。
あの位置は玄関がよく見える。』
そう言うとサリエルは『なるほど』と興味深そうにまたその様子を見詰めた。