とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
しばらくするとシモンズの父親がスーツ姿で玄関から出て来た。
『父親がご出勤だ。』
『…だそうだ。シンディ』
『了解。ニック行くわよ。』
母親は父親を見送る為にポーチまで出てくるのが見えた。
『あの、すみません!!』
シンディが家に入ろうとした母親に声を掛けると足を止めて振り返った。
『この辺りにバーモントさんって方が居るはずなんですけど…』
『バーモントさん?住所はわかるのかしら?』
『はい、これなんですが…』
若いカップルを装って地図を片手に庭先で立ち話を始めた。
その隙に自宅に侵入しようとした虎太郎はセダンから自分が丸見えな事に気付いた。
『右京。フォロー出来るか?』
『任せろ。』
右京はサリエルをその場に残し、通行人のフリをしてセダンに近付いた。
右京がパチンと指を鳴らすとセダンのボンネットから煙が上がった。
『おい、オッサン!車から煙出てるぜ!?』
慌てて車を降りた刑事はボンネットを開けて覗き込んだ。
右京は虎太郎が隠れるように立つと後ろ手で合図を送った。
素早く自宅に侵入すると千里眼を発動させシモンズの位置を把握した。
二階の角部屋か…
静かに二階に上がると隣の部屋に身を潜めた。
虎太郎は床に手をついてブツブツと何かを唱え始めた。
突然一階でガシャン!!と何かが割れる音がして慌ててシモンズが部屋から出て来た。
『ママ?…いないの?』
階段をシモンズが降りたのを確認してシモンズの部屋に侵入した。