とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~


『彼を見たというある人は“メシア(救世主)”だと言ったんですよ…』


『メシア…そう…ですか…』



アンナは口元に手を当てて少し考えるような仕草をした。



『それが正しいかは分かりません。だって…あの威圧感は…』


『暖かい人なんじゃないんですか?』


『はい。暖かい人です。でも…威圧感があって凄く怖い人…』



支離滅裂である。


“黒いフードの男”を見たのは事実だが、その外見から妄想したとも考えられる。


気になっていた人物について解らなくて内心ベッカーは落胆した。


あの男の話を聞いてから自分の中で期待のような感情が消えないのだ。


アンナは『あ…』と顔を上げるとベッカーに視線を戻した。



『夢の中で声を聞いたんです。

…そうだわ…あれはきっとあの人よ…!』


『なんて言われたんです?』


『彼は…』








ベッカーは白い壁に囲まれた部屋の窓から外を眺めた。


アンナ・シモンズの言葉が脳裏に浮かぶ。




“お前の悪夢は終わった”



あの男がそう言ったらしい…


まるで預言者ではないか。

何者なんだろう…



『…ですね、Dr.ベッカー。』


『あ…ああ、すまない。考え事をしていた。なんだい?』


『シモンズさんですよ!まるで別人でしたね。』



まさに別人のようだった…


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