とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
巧みにそれをかわすと右京の突きが脇腹スレスレに繰り出された。
この突きは以前喰らって3日間ろくに動けなくなった。
─午後からデートだっつーの!!
身を捻って腰を落とすと木刀で足を狙う。
右京がフワリと跳ねてかわすのがわかった。
そのままもう一発回転して斬りつける。
バク転で避ける右京の動きに歓声が上がる。
間合いを取ると一気に打ち込んで来る右京の太刀が急に重くなった。
─来た…!!
何度か手合わせをしてわかったのだが、右京の太刀が怖いのは一撃が重く感じてからなのだ。
普通の人間がこれを受けて平然として居られるのは多分彼の師範くらいだろう。
気を抜けばやられる事は明確である。
まともに喰らわないようにするのが精一杯で太刀だけでは右京と渡り合うのは不可能に近い。
木刀を逆手に構えたのを見て次の一撃が振り下ろされる瞬間体を引くくして回転させ、左足に蹴りを繰り出した。
よろけた彼を見てチャンスと思ったのも束の間、生きていた右足を軸にして強烈な回り蹴りを脇腹に喰らってしまった。
大の字で芝生に倒れて荒い息を繰り返す。
『…かっ…勝てるかってのッ!!』
ゼェゼェ息をする虎太郎に手を差し出す右京は、全く息が乱れていなかった。
『おかげで少しスッキリしたよ』
“少し”かい!とツッコミを入れる気力もなく、引き起こされた虎太郎をリサが心配そうに覗き込んだ。
『無理だったよ…』
そう言うとリサはニッコリ笑ってヨシヨシと虎太郎の頭を撫でた。