とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
グリグリと右京の銀髪を撫で回すニックを横目に頭の中で思考をフル回転させた。
『アメリカまで行ってたら時間かかるんじゃないか?』
『確かにそうだよな~
そこまでの時間もないか…』
『だろ!?しかも単に猟奇的な事件ってだけならゴシップネタと変わらねーって!
だったらもっと宗教的要素がある…例えば“死海文書”とかどうだ?』
『“死海文書”か…
昔やろうと思ったが止めた。
ヴァチカンに手が出せない。』
ごもっともな理由だ。
ふとニックは右京の顔を見てそう言えばと口角を上げた。
『クロウってアランと同じ大学だよな?』
『…そうだけど?』
『あの古い聖堂がある…』
『聖堂なんてイギリスならどこだってあるじゃないか…』
『なぁ…そこの聖堂にヴォイニッチ手稿の写本があるって噂、聞いた事ないか?』
根も葉もない噂が飛び出し、さすがに右京もため息をついた。
そんな貴重な物があんな所にあるわけないと思うのだが…
だがヴォイニッチ手稿は確かイェール大の書庫保管のはずだ。
それを指摘したらまた話が降り出しに戻るだろう。
『…クロウ暇だろ?』
『暇じゃねぇよ…プライベートの方が大変なんだよ。』
忍へのフォローをどうするかという最大級に重要な課題が残っているのだ。