とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
第2章
イギリスの夏は湿度は高いものの、日本より過ごしやすかった。
休みに入ると寮生はパラパラと実家に帰り出した。
虎太郎はしばらくはP2に入り浸るらしく、当分は寮に残ると言っていた。
右京はロンドンの叔父の家に行く為、数週間分の荷造りをして寮を後にした。
ここを離れる前にP2に寄りその後の調査内容の報告を受けた。
『クロウ、家出かい?』
『そう、アランに追い出された。』
そんなジョークにニックは笑うと手短に例の“クー・シー”の件について話し出した。
『やっぱりあの付近に何らかの精霊がいるらしい。
まだ正体がわからないから迂闊に仕掛けるのは危険だろう。』
というのも、右京の一掃したはずの“クー・シー”はまた現れ出し多少の目撃例があったのだ。
だが、さすがにもう右京の前にはなかなか現れなかった。
相手も警戒しだしたのだろう。
『でも、被害は今のところ出てないわ。
クロウとアランが戻ってからもう一度作戦を練りましょう』
『ヒューガが残ってくれるし、心配ないさ。』
シンディとニックの言葉に頷くとその場にいないみんなによろしくと伝えてロータリーへ向かった。
バスの切符を買うと携帯で叔父へ電話を掛けた。
「叔父さん?俺~」
「右京か。放蕩息子が…
連絡もしないで何してた。」
「学生だよ。これからバス乗るから、夕方にはそっち着くよ」
「そうか。気を付けてな」
そう言って叔父である忍の父は電話を切った。