とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~



男性は『座りませんか?』と自分の隣を空けた。


右京は人懐っこい中年男性の笑顔に叔父を思い出し、断りきれずに腰を下ろした。



『慌ただしそうですよね…ドクターって。』


『ええ。…と言っても私は心理分析医なので、カウンセリングが主体なんですがね?

人間の心の闇みたいなものに触れる事が多いもので…』


『…それはそれでやっぱり大変ですよ。

人間の心は施術して治るものじゃないし。』


『そうなんですよ。

でも最近良い傾向になりつつある患者さんが増えて来まして…

こうやって祈りを捧げてるおかげかもしれません。』



そう言って男性は穏やかに笑うと、右京もつられて笑った。



『ああ、私としたことが…初対面の方に話し込んでしまいました…』



そう言って男性は立ち上がった。



『そろそろ病院に戻らないと…』


『きっと患者さんがドクターの事を待ってますよ。』



右京がそう言った時、向こうから歩いて来た男性が『ドクター?』と声を掛けてきた。



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