とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ドクターは振り返って『ああ、刑事さん』と手を挙げて挨拶した。
右京は刑事と言われた男と目が合った。
『…』
『…』
一瞬目があったまま固まる。
『これから帰るところなんですよ。
刑事さんもミサへ?』
『ええ、たまたま暇になったんで…
…お知り合いですか?すみません、お邪魔してしまって…』
『彼は先ほど知り合いまして…私の戯れ言を聞いてくれてたんですよ。』
ドクターは笑いながら『ではまた』と言って去って行った。
刑事はさっきまでドクターが座っていたところに静かに座って聖堂を眺めた。
『…なにをしてる…』
『それ、こっちの台詞。まさか外で会うとは…』
『まったくだ。…下見か?』
『ああ。念の為な。』
右京とその刑事…ダンは目を合わさず、ただ聖堂を眺めながら会話を続ける。
『…Dr.ベッカーは“黒いフードの男”にご執心でね…』
『…』
『患者の影響らしいが、会いたがってたぞ。』
『ふ…もう会ったからいいだろ。』
右京は立ち上がって聖堂に向かって歩き出した。
ダンはチラッと右京を見てから『そうだな』と呟いて逆方向へと歩いて行った。