とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
“放蕩息子”か…
“息子”という単語に自然と笑みが零れた。
バスが到着し乗り込む人々の方へ右京も荷物を背負って続いた。
窓際の席に座ると外の景色を眺めながら、こっちに初めて着た時の事を思い出した。
忍によく似た叔母と、師範に良く似た性格の叔父は、右京の到着を楽しみにしていてくれたらしい。
「よく来たわね、右京!
イギリスにいる間は今日からここがあなたの家よ。」
そう優しく笑って言う叔母に忍を思い出し和んだ。
「しばらく見ない間にデカくなったな~!」
叔父はバシバシ右京の肩を叩きながら嬉しそうにそう言った。
「お世話になります。」
それから部屋を案内され、簡単に荷解きをすると階下から呼ばれリビングに向かった。
待ち構えていたように二人は代わる代わる話し出した。
「忍と親父は元気か?」
「元気過ぎるくらいだよ。」
「ふふ…忍は右京がいるから心配してないわよ。
でもお義父さんには随分やられてるみたいね~?
忍がいつも傷だらけだって言ってたわよ?」
「ふん、当然だ。
俺が居たら病院送りにしてくれるわ!
娘に手を出しやがって!!」
「確かに…否定は出来ないんだけど…
叔父さんに認めて貰えるよう、努力する。」
「努力しろ!認めないがな!」
叔父はそう言いながら豪快に笑った。
「あなたったら、またそんな事言って…
本当は相手が右京で良かったと思ってんのよ?」
小声で叔母はそう耳打ちすると微笑んでくれた。