とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
『やぁ、ミス…じゃなかった、クロサキ!…』
『おはようございます。
寝坊しちゃって…朝食食べましたか?』
『俺に構わず食べていいよ。』
ダイニングに入って来たニコールは椅子に座ると忍の淹れたコーヒーに口を付けた。
『ところで…クロサキ…言いづらいね…シノブでいいかい?』
忍はフレンチトーストを食べながら『どうぞ』と頷いた。
『では、シノブ。彼氏は鍵を喜んだかい?』
『あ、はい。ありがとうございました。』
ニコリと笑って答えるとニコールは満足そうに『良かった』と笑みを返した。
『早速打ち合わせをしよう。
今回は“ヴォイニッチ手稿”の記事を書こうと思ってるんだ。』
『“ヴォイニッチ手稿”!?すごい!…でもあれがあるのってアメリカじゃ…』
ニコールは意外そうな表情をして忍を見た。
『…驚いた…一発で俺の話を理解した担当者は初めてだよ。』
『大学で一通り勉強しましたから。』
『なら話は早い。
その“ヴォイニッチ手稿”の写本がイギリスのとある聖堂に保管されてるって噂があるんだ。』
『本当に!?…ワクワクしますね…』
『だろだろ!?それを探りに行くんだ!』
『…え?噂をまだ確かめてないんですか?』
『ああ、確かめてない。』