とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~




時計は6時過ぎ…



『あと30分はあるな…さっきの話、続きは?』


『ああ、続きね…』



倒れた椅子を直しながらそう言うとニックは続きを話出した。





結局噂の真相を確かめる為に二人揃って聖堂に行く事になった。


だが忍は『その前に一度確認しておきたい』と言い、誰かに電話を掛けた。


電話の相手は忍の同期の学生らしい。


日本語でのやり取りを聞く限りでは仲の良い友達だった様だ。


数分後、忍はニックに『確かにそんな噂が少なからず流れているらしい』と告げた。


彼女の聞いた話によると、噂の出どころは司祭らしい。


写本が密かに聖堂にあると知り合いにうっかり喋ってしまったのが始まりだったみたいだ。



『噂自体は本当にありそうですね。

では行きましょうか。』


と彼女はきびきびとニックを促した。


ニックは彼女が非常に頭の回転が早く、なかなか鋭い勘の持ち主だと感じた。




誰かに似ている…



答えは明確だ。
忍は右京にそっくりである。


外見や雰囲気はまるで似ていないのに、話していると中身が彼に酷似しているのだ。



右京の様に露骨に態度に表す事は殆どなく、水面下で沸々と感情が起伏している様で目に見える事はない。


上品で綺麗な顔立ち、繊細で優雅な立ち振る舞いはまさに“やまとなでしこ”である。


…水面下に潜む鬼の面が見えなければ…



ニックはその水の中からいつ鬼が出てくるのかとビクビクしていた。




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