とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
聖堂が近付くにつれてその全貌が見えて来ると、忍は感嘆の声を漏らした。
『素敵な建物ですね…』
『ああ、そうかもね。
俺達には日常的にそこにある建物としか感じなくなってしまったけど。』
ニックは右京の報告を思い出し、すぐさまカメラの位置を確認した。
『私はアシスタントとして写真を担当します。』
『じゃあ、俺が話を聞こう。英会話は得意なんだ。』
『そうですか。時々ニコールの話が理解出来ないような気がしますが…』
ニックは『面白いジョークだね~』と笑った。
タイミング良く扉が開き、そこから姿を現した司祭にニックは駆け寄った。
『神父さん!丁度良かった!少しお話を聞かせて下さい。』
『どうされましたか?』
『私、雑誌記者をしているウィッシャーと言う者です。
今度、うちの雑誌で聖堂の特集をする事になりましてね?少し取材させて頂けますか?』
そう言うと司祭は『おや…そうでしたか』と急に背筋を伸ばすと咳払いをした。
司祭が軽くポーズをとったので忍は慌ててカメラを構えてシャッターを切った。
ニックはボイスレコーダーを取り出すと司祭に質問を振った。
この聖堂の歴史は?とか、見事な建物ですね~とか…
横で忍が何か言いたそうな雰囲気だったが気にしない。