とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~




『それでは仕方ありませんね~…残念ですが“ヴォイニッチ手稿”は諦めます。

あるかどうかわからない書物を探し出すのは骨が折れるでしょうし…』



隣に居た忍は思わず『ええ!?』と不満を露わにした。



ニックは忍が余計な事を言い出す前に『さあさあ』と背中を押して書物庫から追い出した。



『ちょ…ちょっとニコール!?』


『いいから!』



そのままステンドグラスに照らされ明るい聖堂内まで来ると、ニックは忍の肩に腕を回した。


嫌そうな顔の忍に『作戦変更だ』と囁いた。



『…どうするんですか?』


『恐らく写本は書物庫じゃなく別の場所だ。』


『理由は?』


『司祭の言葉聞いただろ?“ここにあるのなら”って言ったじゃないか。
恐らくあの書物庫じゃないのさ。』


『じゃあどこに…』


『“マリア様”なら知ってるかも。』



そうニックが言うと忍は理解したように『まさか』と目を見開いた。



『ワクワクしてますね…』


『さりげなく、且つ大胆にマリア様の肩でも叩いてみようか。』


『さりげなく…大胆…』



忍はちょっと考えるとニックを見てニヤリと笑った。




歩いてマリア像の前を通り過ぎようとした時、ニックはさりげなく忍の体を石像に押し付けるように体を寄せた。



それを忍は大胆に投げ飛ばし、ニックはマリア像の足元に激突して混沌したのだった。



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