とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ブツブツと不満を口にする右京の頭を少し背伸びをして撫でながら、忍は困ったように笑った。
しばらくすると入り口でチャイムが鳴った。
食器を並べる忍に『俺が出る』と言うと玄関に向かう。
『やぁ“はじめまして”』
わざとらしくそう言うニックに右京が嫌悪感を込めた目で睨んだ。
『どーゆーつもりだ?』
『首を縦に振るまで帰らない…』
『おまっ…ふざけんな…!』
ニックの襟を掴んだ所で後ろからひょっこり顔を出した忍が『Welcome』と声を掛けた。
慌てて『ゴミ付いてますよ』と誤魔化す右京にニックは『すまないね~』とにこやかに答えた。
『右京、私が担当させてもらってるニコールよ』
“担当してやってる”の間違いだろ…
『どうも、ウキョウ・クロサキです…』
『ニコール・ウィッシャーです。
あれ?…クロサキって…え?…ええ!?』
右京の名字を知らなかったニックは本気で驚いたようだった。
『いとこ同士なんですよ。…って言っても見ての通り俺は私生児ですけど。』
いちいち騒ぐなと目で脅す。
『な…なるほど。てっきり結婚してるのかと思ったよ…』
『よく勘違いされます。』
握手を交わすと仕方なしに招き入れた。