とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
『ドイツ語の本が多いんだな。』
『あ?ああ、何か読みたいのあったか?』
『ドイツ語はわかんねーよ…』
『じゃあ…ギリシャ語は?』
『少しなら…』
ニックは立ち上がって本棚から何冊か本を引き抜いた。
『ドイツ語も勉強しといて損はないと思うぜ。
ほら、これは俺が学生時代の論文資料だ。』
『宗教学…?そっちが専門だったのか…。』
『元はな。…それよりクロウ…頼むよ!
シノブも絶対喜ぶと思うんだよ…』
確かに忍は初仕事でかなり張り切っていた。
それが“ヴォイニッチ手稿”だろうが別の古文書だろうがあの題名の無い本の内容が解れば喜ぶ事は間違いない。
『…要は内容が見れればいいんだろ?』
『そう!手伝ってくれるか!?』
『…どうせ手伝うまで忍との時間を邪魔する気だろ?…』
ニックは『わかってんじゃん』と、にいッと笑った。
『んじゃ詳しくは後でな!』
『今日!?』
立ち上がって右京の眉間に人差し指を突き付け、口パクで“当たり前”と言ったのがわかった。
今日はずっと忍と居るつもりだったのに…