とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
題名のない本
司祭は絶対におかしいと思った。
それは昼過ぎの事。
またあの記者達がやって来た。
昨日は『諦める』と言っていたのに、一夜明けたら『やっぱり探したい』と…
そして書物庫に入り1時間程で見つけ出してしまったのだ。
“題名のない本”を…
更におかしいのはその本が書物庫にあったという事だ。
『助かりましたよ~!牧師さま、ありがとうごさいます!!』
『え?…ああ、いえ…』
あまりのショックで間の抜けた返事をしてしまった。
先代からこの本に関しては『書物庫ではない所に保管してある』と聞いていたが…
興奮気味な東洋人と思われる助手の女と、満足そうな記者の男は『見ていいんですよね?』と同時に司祭を見つめた。
まさか駄目とは言えず、『どうぞ』と頷かざる負えなかった。
『ページ数が極端に少ない…』
『ヴォイニッチ手稿じゃないんですかね…』
『そっ…そんなはずありません!』
つい口を挟んでしまって司祭はしまった!と後悔したが、時すでに遅し…
『何故そう言い切れるんです?』
と記者に突っ込まれてしまった。
ここまで来てしらばくれる事もできまい…
司祭は観念したように口を開いた。