とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
大学の図書館でレポートを仕上げ、珍しく余裕で提出が出来て右京は気分がよかった。
まだ周りは追い込み段階で半ば半狂乱になってる学生が多い。
それは寮に戻っても同じで、まともに本すら読める雰囲気ではないのは明らかだ。
ルームメイトのアランはもうすでに部屋には居らず、相変わらずの早業でさっさと逃げたらしい。
さすがと関心しながら右京も寮を抜け出しP2に避難する。
『クロウもここに逃げて来たのかい?』
『アラン、ここに居たのか。』
『ニックが“ヴォイニッチ手稿”を追ってるって聞いてね。
面白そうだから待ってるんだけど、まだ来てないんだよ。』
なるほどと相槌を打ちながらソファに足を投げ出して本を開いた。
時々辞書を引きながらでなかなか進まない。
『…俺、この本読めるんだろうか…』
ボソッと出た弱音にアランが『珍しい』と呟いた。
『そういえばクロウ。クリスのコレクションを見せて貰ったんだって?』
『ああ、あれね!びびったよ!まさかガンマニアだとは…』
『なかなかメンバーになってくれなくてね…』
『まだ諦めてないのか…』
そう言って少し笑うと右京は『そういえば』と思い出したように顔を上げた。