とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~



『あの時、クリスを見かけたんだ…どこに行くつもりだったんだろう…』


『あの時?』



何気なく言った言葉にアランが反応した。



『ああ、昨日の夜ニックの仕事でちょっと手を貸したんだ。

その時聖堂の前でクリスを見かけたんだ。』




右京はそう言って昨夜の出来事を話し出した。







あの日、ニックとロイの小競り合いを仲裁した後、わざと暗い路地を選んで聖堂方面に向かった。



特に目立った行動はしていなかったが、最近になって“黒いフードの男”が夜の街に出没すると言う噂もあると聞く。



都市伝説を追ってて自分が都市伝説の一つに入ってしまった事に笑える。

静かな暗い路地で右京はひとりニヤリと口元を上げた。





聖堂はクリスマス前と言う事もあり、ライトアップの灯りやツリーの飾りで華やかだった。



それでもさすがにこの時間になると人通りは無く、寂しいく感じられる。




そろそろか…




夜中の0時になるとここのライトは一斉に消える。


たぶん寮で生活している学生ならみんな知っているだろう。



隣人のマイケルはクリスマスの2日間だけは灯りが消えないと言っていたが、去年は日本で過ごした為確かめてはいない。



300mほど離れたビルの壁に寄りかかり、腕時計に目をやった。


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