とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
ニックもさぞ驚いただろう。
あの細身な体でまさか投げ飛ばされるなんて思ってもなかったに違いない。
「そりゃ怖がるのも無理ないか…」
ブツブツと独り言を言いながら土台に視線を落としながら裏側に回った。
「これか…」
僅かに隙間があり、床に空間があるのがわかる。
この下に“題名のない本”があるらしい。
さて、どうやって動かすか…
念力で浮かせるか、それとも腕力で動かすか悩む。
「…さっき外に人が居たんだっけ…」
浮かせたら降ろす時に物音がするだろうと考え、仕方なしに腕力で動かす事にした。
ズリズリと少しずつ動かし、床の隙間が姿を現した。
そこには古びたトランクが埋まっていた。
右京はそれを引き出すと静かに床に置くとフックを外した。
─これか。
目当てのものを取り出す。
その本に触れた時だった。
「いっ…!?」
頭に激痛を感じ思わず額を抑えて膝を着いた。
…なんだ…!?
直ぐに頭痛は治まったがこんな事は初めてだ。
首を傾げながら立ち上がりトランクとマリア像を元に戻す。
ぶるぶると頭を振ると右京は奥の扉を開けて書物庫へと向かった。