とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
歩きながら本に視線を落とす。
その瞬間再びこめかみに激痛が走る。
「…くっ…!!」
不快感と痛みに頭を抱えてよろめいた。
なんなんだ!?…この本が原因か?
少し休むと何事も無かったように治まった。
元々天界の住人である為、頭痛どころか具合が悪い事など右京には皆無なのだ。
どうしちゃったんだろ…俺…
自分の異常な状態に気味の悪さを感じる。
直感的に早くこの本を手放さないといけないと思った。
大体の場所しか聞いていなかったが、入口の扉が鉄格子になっていたので難なく書物庫は見つかった。
格子の隙間から本を滑り込ませ、フワリと浮いたそれは本棚のあいてる部分に収まった。
それを確認すると胸をなで下ろす。
不調の原因があの本だとしたら間違いなくそれに強烈な負の思念…つまり呪いの類が掛けられているからだ。
今度虎太郎に聞いてみようと考えてながら聖堂を出た。
外に出ると冬の冷たい空気が気持ち良かった。
ふぅと白い息を吐くと電飾の消えた聖堂前の広場を見下ろす。