とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
原因不明の頭痛に少し不安を感じてナーバスになっている自分が少し恥ずかしい。
「忍…」
早く忍の元に戻ろうと翼を広げた時、視界の端に人影を捕らえた。
さっきの奴だ!!
男の視線の先は暗闇で何かを凝視していた。
何をしているのか不審に思いその様子を見ていて、その男が手にしている物を見てハッとした。
─あのリボルバーは…
先日見たばかりなので忘れるはずがない。
確かSAA…通称ピースメーカーと呼ばれる物の特注品と言っていた。
間違いない。クリスだ。
“俺も色々と忙しくてね…”
そう言っていた言葉を思い出した。
クリスは暗闇へと歩き出し、やがて消えて行った。
右京の話を黙って聞いていたアランは『なるほど』と眼鏡を軽く押し上げた。
『その後大丈夫なのかい?』
『頭か?なんともない。
虎太郎に聞いてみたが、稀に何かの危険を本能的に感じると体に異変が起きるらしい。
拒絶反応ってやつだな』
『“題名のない本”に拒絶反応が出るのか…臭うね…』
腕を組ながら考え込んでいたアランは『とりあえず大丈夫なら良かった』と右京の肩を叩いた。
それに笑みを返した時、入口から意気揚々とニックがやって来た。