とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
右京が近付くと叔父は運転席から降り荷物をトランクに詰めた。
「お前さっきあの男達に何かしただろ…」
「友達の悪い癖がうつったらしい。」
「悪い癖?なんだそれ…」
「大丈夫だよ。心配するような事はしてないから。」
叔父は人前で右京が力を使う事を昔から反対していた。
その点は師範よりうるさく、小さい頃は感情で力を暴発させてはよく怒られたものだ。
「身体以上に精神を磨け!!」
それが叔父の口癖だった。
古武道場で育った叔父は、後継ぎが叔父の弟…つまり右京の義父に決まると古武道をキッパリ辞めたのだと子供の頃聞いた。
今は貿易会社のイギリス支部長をしており、こっちに来てからもう4年半になる。
「大学はどうだ?」
「楽しいよ。叔父さんは?仕事忙しいの?」
「あ~ちょっとなぁ~」
「なんだよ、意味深な言い方だな…」
右京の言葉には答えず叔父は黙ってハンドルを握った。
「…なに?」
「なにってなんだ。」
「言いたい事あるんだろ?」
口数の少ない叔父に右京がそう言うと躊躇いがちにポツリと話し出した。
「実は転勤の話があってな…
日本に戻るかもしれない。」
「良かったじゃないか!」
「…そう思うか…」
叔父はちょっと寂しそうにそう言った。