とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
泣きながら自分の名前を連呼する忍をきつく抱き締め「ここにいる!!」と言うと忍は大人しくなった。
「右京…あぁ…右京…よかった…どこにも行かないで…!!」
「大丈夫。ここに居るから…」
忍の不安が右京に伝染して涙腺が弛む。
「忍…ごめん、不安にさせたんだね…」
「右京ぅ…ちゃんと抱き締めてて…!!」
「大丈夫だから…忍のそばに居るから…」
嗚咽を漏らす忍をぎゅっと抱いて髪を撫でてやるとやっと正気に戻ったように右京を見つめた。
「右京…キスして…」
優しくキスをすると忍は「もっと」とキスをねだる。
胸が締め付けられるほど愛しさが込み上げて来て忍の唇を貪るように塞いだ。
「…忍…大丈夫だよ、何も心配いらないから…」
「うん…約束して…?どこにも行かないって。」
「約束する。忍を置いてどこにも行かない。」
そんな約束するべきじゃないのに、その時は忍の不安を取り除いてやりたい…ただその一心だった。