とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
怪鳥“バジリスク”
忍はただ不安だった。
右京が自分を置いてどこかに行ってしまう気がして…
ただ不安だった。
自分の知らない右京になってしまうみたいで…
ただ…不安だった。
そのうち自分を右京が忘れてしまうんじゃないかって…
不安で不安でたまらなかった。
そんな自分を右京は「大丈夫、大丈夫だから」と抱き締めてくれた。
“大丈夫”って言われているのに“ごめんね”と言われてる気がして…
やっぱり不安は消えない…
止めどなく流れ続けるかと思った涙は意外とすぐ止まった。
それから右京は忍のそばを離れようとせず、心配そうに世話を焼く。
笑っちゃうくらい馬鹿みたいに世話を焼くから恥ずかしかった。
ダイニングのテーブルに座らせてアイスボックスから取り出した氷をタオルにくるむ。
そんな右京の動作をじっと眺めていると彼が突然自分を見たからドキッとした。
だって…その顔があまりにも優しいから…
「ビッグベン、見に行くんだろ?」
そう言って冷たいタオルを忍の目元に当てて、泣きはらして腫れた目を冷やす。
「自分で出来るから大丈夫。」
「ダメ。俺のせいだから、これは俺の仕事。」
そう言ってまた馬鹿みたいに世話を焼いた。