とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
その様子を見て右京はハッとした。
息子同然に接してくれる叔父は自分を心配しているのだろと右京は察した。
「日本に帰ったら親父と同居する予定なんだ…」
「叔父さん、俺なら大丈夫だよ。」
「お前が大丈夫でも俺はどうなる!」
そこまで考えてくれていたのかと思うと胸が熱くなった。
「あのクソ親父と一緒の家に住むなんて、最悪じゃないか!」
「そっちかよ!!」
右京は勝手に解釈して期待した自分を叱咤した。
「まさか右京を心配したとでも?
お前の事はこれっぽっちも考えてねぇよ!」
右京は豪快に大口を開けて笑う叔父を張り倒したい衝動を必死で抑えた。
「だが右京。いつでも帰って来いよ?
お前には帰る家があるんだ。忘れるなよ?」
「ああ…分かってるよ。」
右京の返事に叔父はちょっと微笑むと前方の一本道に視線を戻した。
右京も叔父から目をそらして窓の外を頬杖をついて見つめた。
明らかに照れ隠しだとわかるその仕草に、叔父はクスクスと笑いながら右京の銀髪をグリグリ撫でた。
家に入るまでそんなじゃれたようなやり取りをしていると、出迎えた叔母は「仲がよくて羨ましいわ」と微笑んだ。
久しぶりの叔父と叔母との時間は温かくて楽しいものだった。