とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
駅から列車に乗ってロンドンに向かう。
あまり詳しくはないが、しばらく滞在した事があるので迷う事は無かった。
「この店、叔母さんと来た事あるんだ。」
「お母さんと?」
「そ。毎日家じゃつまらないって言ってさ…時々叔母さんとデートしてた。」
「えー!?浮気モノ~!」
そんなたわいのない話をしながらランチをとる。
二人の時間がこんなに幸せだと感じたのは何故だろう。
胸の奥に秘める不安は口にしない。
それがルールである様にお互い今を目一杯楽しむ。
沈み行く夕日を見つめながら右京がポツリと呟いた。
「…今日…泊まっちゃおうか…」
「…どうしたの?急に…」
「…なんとなく…」
忍は黙って夕日をまた眺めて「…それもいいかもね」と笑った。
右京は本音を言わなかった。
─帰ったら楽しい時間が終わるような気がするから…
そう言えば忍は絶対悲しい顔をするだろうし、それを見るのもツラい。
だから言わない。
結局外泊はせず、列車に乗って帰った。
列車で隣に座る忍は右京にもたれて寝息をたてていた。
可愛い寝顔がたまらなく愛しくてちょっと頬ずりをしてみた。
そのうち自分もウトウトとしだした。