とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
妙な胸騒ぎがした。
「…早く帰ろう。」
グイッと忍を引き寄せて肩を抱くように足早に歩く。
「…右京?」
「…つけられてる…」
「え…!?」
確かに感じる鋭い視線に右京が警戒すると、忍は辺りをキョロキョロと見回した。
「…何もいないけど…」
「さっき、列車に乗ってる時も変な感じがしたんだ。」
以前忍には通るなと言った治安の良くない路地に入ると忍が不安そうに右京を見た。
「…大丈夫。」
止まらずにどんどん路地を進む。
忍は既にどこを歩いているか解らなくなった。
「…しつこいな…。忍、跳ぶよ。」
「え?」
突然忍を抱きかかえると右京が高く飛び上がった。
忍がビックリして右京にしがみつく。
真下を見下ろした右京は無数に光る赤い光りを見た。
あれはなんだ?
ピュィィィィーー… !!
またあの鳴き声だ!
ふと一羽の鳶が近づいて来るのが分かった。
それは右京の手間で一気に降下すると無数の赤く光るそれらに突っ込んで行った。
頭の中に聞き覚えのある声が聞こえた。
─さぁ、今のうちに…!
右京はそれに黙って従う様に建物を跳躍しながらその場を去って行った。